開催概要
実行委員
参加アーティスト
イベント情報
アートタウン(10/6-26)
ビエンナーレパンフレット/アートタウンマップ【PDF 2.74MB】
ボランティア募集
掲示板
トップ
インターネット展覧会
会津みさと祭り
Koi 鯉 アート のぼり
福島現代美術ビエンナーレ2008 > 概要
 
開催概要
福島現代美術ビエンナーレ ポスター■展覧会名称
福島現代美術ビエンナーレ 2008 YAMA
山、精霊、森、炭鉱


1.展覧会趣旨
  「福島現代美術ビエンナーレ」は4年前から福島で開催されてきた「現代美術の祭典」です。
 初年度(2004年)は、福島大学の学生、院生諸氏が実行委員となり始動しました。地方では未だ、号数などの大きさや表現材料を規定した「公募展」による美術展が一般的です。そのため地方に住む若い人たちが、インスタレーションやビデオアート等、幅広い表現活動に触れる機会や、これらの多様な現代美術を支援する活動もほとんどありませんでした。そこで福島現代美術ビエンナーレでは、このような「ビエンナーレ」という二年に一度の美術展を通して、福島という一地方で、住民との協働によって、一緒に「福島の展望を拓く活動」を築くなかで、地域文化を活性化させていきたいという願いが込められています。
 2006年は、福島県文化センター、福島文化振興事業団の協力のもと、国内外の作家160人が参加し、商店街を利用した活動や、ワークショップなども加わり、福島市街地全体に一層拡充された企画を開催することができました。また2006年からは「空 ? Sky,Air,Heaven,Ku,Firmament ?」をテーマに作品を展示企画しました。
註1)  招待作家の靉嘔氏は、虹色の20mの和紙でできた絵画を提供して下さいました。またいわき市在住の吉田重信氏は、水と鏡を用いて実際の虹を生み出す作品をインスタレーションされました。他にも、多様な「空」の作品が展示されました。商店街を利用した「ArtTownアートタウン」では、土方巽氏の舞台を創作した吉江庄蔵氏、テンペラ画の川口起美雄氏などが賛同して下さいました。また、折元立身氏や大野一雄氏、平山素子氏、和合亮一氏によるパフォーマンス活動も積極的に紹介されました。
 作成された「福島現代美術ビエンナーレ2006」の図録には、そのような多種多様な美術作品と一緒に、地域住民の方々が参加された講演会やワークショップなどの資料も記録、紹介されています。
 「現代美術」 というと、未だ日本では一般に、 「難しい」 とか「堅苦しい」イメージがあるようです。美術を特別なもの、自身の生活とは関係のないもののように考えている方も多いです。しかしながら「同時代の美術」は、鑑賞者が実際にその作品を見て、「体験する」なかで理解することも多くあります。現代美術を通して、地域のもつ特有の「場」と個人が関わっていくなかで、「新しいものの見方」による価値観を地域文化に築いていくものだと信じています。
 本企画の「福島現代美術ビエンナーレ」は、福島大学の学生諸氏をはじめ、地域の人々との共同によって活動していくなかで、福島の地域づくりにおいて、新しい交流の場を設け、個々の「壁」を無効にした積極的な交信を保つ場を生み出していくものです。
註1)2006年、「空」をテーマにしたのは、高村光太郎の最愛の妻、智恵子の言葉(「智恵子は東京に空が無いと言ふ。ほんとの空がみたいと言ふ。・・・・阿多多羅山の山の上に毎日出てゐる青い空が智恵子のほんとの空だといふ。」(高村光太郎作『あどけない話』より)が発端となっています。 福島県北部の安達太良山(阿多多羅山)の頭上はるか高くに広がる「空」。地球を覆う「空」のように、様々な国の人々と「空」で繋がっていく世界を重ねました。今日、美術は様々な視線の多様な表現が生まれています。それぞれの作家にとっての「空」は違っていても、一つのテーマで繋がった国際的な文化交流の場を設けたいと考えたからです。

2.展示会の内容
福島発信の文化活動を推進していくため、「三つの柱」に基づいた様々な関連企画を開催。
【三つの柱】
1.福島に関連したテーマの設定
  本年度のテーマは 「 YAMA 」
2.地域住民と「同時代の美術、多国籍の若手作家」との交流
  大学機関と地域との連携(大学生、学校関係者と地域住民が連携をとった企画運営)
  多様な現代美術の作品を紹介し、子どもたちに向けたワークショップを開催
3.多種多様な芸術活動から発進する地域づくり
  平面、立体、インスタレーション、ビデオアート、アニメーション
  パフォーマンスによる「個人の身体」を基盤にした活動を重視
2008年の実施要綱
1.タイトル
「福島現代美術ビエンナーレ2008  YAMA 〜山、精霊、森、炭鉱〜 」

 今年度の「福島現代美術ビエンナーレ2008」のテーマは「YAMA」です。
 「ヤマ」という同音の中には、「山、精霊、森、炭鉱」などの意味が内包されています。本企画による「ヤマ」という言葉を用いる理由は、福島県が、浜通り(いわき市周辺)、中通り(福島市、郡山市周辺)、会津(会津若松市周辺)の3地域に分けられながらも、その各々の地域が、「ヤマ」という言葉で、象徴的に重ねられるからです。「地域文化と現代美術」との関わりの中で、今年度のビエンナーレの「ヤマ」は大きく次のような二つの象徴性をもっています。

1)、「山、耶麻、森林」
 元は『いわはしやま』と読み、『天に掛かる岩の梯子』を意味する磐梯山。「会津磐梯山は宝の山」という鍵言葉によって、会津若松地区(ひいては福島県は)広く全国に知られています。
 福島市のシンボル的な存在である信夫山は、古くは万葉集、近年ではスタジオジブリの「となりのトトロ」の主題曲"さんぽ"を作詞するモデルともなりました。また福島には、智恵子抄の詩にある安達太良山、春の訪れを知らせる風物詩である「雪うさぎ」のある吾妻小富士、磐梯朝日国立公園内に位置し東北アルプスの異名をもつ飯豊山、UFO記念館のある千貫森など、福島の地域文化を考えていくうえで、様々な象徴的な山が多くあります。
 一方、「YAMA」を広義で考えると、日本はもともと「山の国」でした。「山」の見えない環境はむしろ「不自然」であり、日本の重要な自然景観を形成してきました。山岳信仰のように、富士山をはじめ、山々は歴史的に宗教的な対象ともされており、豊かな森林を内包した地形が、日本の象徴的な地域文化の形成と重要な関わりを持ってきたのです。このような「山」に対する認識は、西洋諸国では異なった捉え方をしています。一昨年のビエンナーレで来日したドイツの美術家が述べていたように、「日本人は、森を山にあると考えるが、ドイツでは平地にある」という自然観の違いや、「神や仙人が居る山と魔物がいる山」との違いなどもあげられます。
 「YAMA」と主題とした芸術を通して、地域活動を再構築していくことは、自身の住む「土地」の文化を考えていく大きな礎となるものでしょう。

2)、「炭鉱」
 2006年、福島県常磐市(現・いわき市)の常磐炭鉱を舞台に作られた映画『フラガール』が全国的に大ヒットした。炭鉱で働く人々が職場を失う現実や苦難に立ち向かうなかで、町おこし事業として立ち上げた常磐ハワイアンセンター(現スパリゾートハワイアンズ)の誕生から成功までの実話を描いたものでした。
 一方、同年に、いわき市と同じく「炭鉱」を地域産業の基盤に据えていた歴史を持つ夕張市が財政破綻し、市が主導した観光事業「石炭の歴史村」に対する批難が報道機関で多数見聞きされました。夕張市に建設された遊園地(ロボット館、はく製館)などの諸施設が、地域と全くの関わりがないことを批難する言葉も多く見聞きされた。しかし、「フラダンスショー」を基にした観光施設との違いから捉えた見解は、あまり伝わっていない。
 山間部にあった夕張市は、漁港のある福島県いわき市と比較し、中心的な産業の消滅が一層困難な条件にあったことは理解できる。しかし二つの地域がたどった差異の一つは、夕張市の遊園地などの「箱もの」の増設が、「人とものとの関わり」を優先したことに対して、いわき市の「ハワイアンセンター」が、地域住民の内発的な努力によって「人づくり」による「人と人との関わり」を考えていた違いなどがあげられよう。 「夕張問題」は、今、日本の様々な地方における課題も内包しているであろう。「地域づくり」を歴史的な地域産業や自然環境との関わりの中で、精神的な「文化」を捉えていくうえで、次世代の若い人が魅力を感じる「同時代の美術」に目を向けることは、大変重要だと考えています。

  ▲このページのトップへ
©2008 Contemporary Art Biennare Of Fukushima. All Rights Reserved.