福島現代美術ビエンナーレ2016

福島現代美術ビエンナーレ2016 重陽の芸術祭「氣 indication」

日程:2016年9月9日〜11月23日

福島ビエンナーレとは

「福島ビエンナーレ」は、ビエンナーレ(隔年)で開催されてきた藝術の企画活動です。福島大学が中心となって、2004年から地域住民との協働により開催されてきました。
福島を拠点にした若手アーティストを支援し、幅広い世代の人々が興味、関心を抱く最先端のアート(絵画、彫刻、工芸、インスタレーション、ダンスや詩のパフォーマンス、ビデオアート、アニメーション、映画など)を紹介する中で、幅広い芸術活動に触れる機会や、国際交流する場を設け、地域文化を活性化させる一役を担っています。

2012年は「SORA」をテーマに福島空港と空港公園で開催し、震災後の福島発信の芸術企画として国内外に広く知れ渡り、一ヶ月間に国内外から45,000人が訪れました。
2014年、10年目の節目となる年は、会津地方、湯川村と喜多方市を拠点に、「お米」をテーマに開催しました。会津にとって稲作文化は、地域の風景を形作り、豊穣の祈りを捧げる伝統芸能や神社仏閣の文化を育んだ精神的な基盤です。飯豊山と磐梯山から流れる川の流れは田を潤し、出来上がったお米は、酒、味噌になって、地域の文化を形づくってきました。芸術諸活動を通じて、日本人の米に関わってきた生活習慣や農業の祝祭、その精神的な支えとなってきた自然の「氣 循環」を紹介しました。

2016年、あらたに「福島ビエンナーレ」として再始動します。今年は二本松を中心に、最初に開催される「重陽の芸術祭」、福島市、郡山市のアート活動と共催で開催します。テーマは「氣 indication」。気配、生と死の意味、「重陽」の意味を内包しています

「福島ビエンナーレ」の開催初日となる9月9日は、「重陽の節句」で、日本酒に菊を浮かべて不老長寿を願う「長寿の節句」となります。二本松城(霞ケ城)は全国一の規模をほこる菊人形祭が開催されており、菊は古来より薬草としても用いられ、延寿の力があるとされてきました。菊は他の花に比べて花期も長く、日本の国花としても親しまれています。菊を眺めながら宴を催し、菊を用いて厄祓いや長寿祈願をする「重陽の節句」は、五節供(他に1月1日、3月3日、5月5日、7月7日)の中で最も重要な日でした。
「重陽の芸術祭」では、安達が原の鬼婆伝説、智恵子抄、菊と日本酒に関連させ、「長寿」をテーマに、ワークショップやシンポジウムを開催します。

東日本大震災後、福島県は原子力発電所の事故によって、伝統的な文化が失われつつあります。地域の芸術活動の支援も少ない状況にあるでしょう。福島の伝統文化と東日本大震災後のFUKUSHIMA をキーワードに開催する「福島ビエンナーレ」は、創作活動、鑑賞活動、体験活動を通して、人々が幅広い「藝術」に触れ合い、集い、交流する機会を設け、地域文化を活性化させる一役を担うなかで、福島に芳醇な文化を実らせていきます。
二本松は東日本大震災と福島原子力発電所の被災地となった地域の避難所が多数設置されています。安達が原の鬼婆「黒塚」伝説や智恵子の生家、日本一の菊人形祭とその開催されている二本松城(霞ケ城)などに関わる文化資料が残されています。
「重陽の芸術祭」では、地域の人々との協働活動を軸に、新しい価値観を提供する機会と、子どもたちが地域文化に魅力を感じ、未来に向かって夢と活力を感じてもらえるような価値観を築いていくことを目的としています。

・富士(不死)山の見える最北限の地
・日本一の菊人形祭
・智恵子の生家
・大七酒造、奥の松酒造など、世界的に有名な日本酒の産地
・黒塚伝説、安達が原の鬼婆

二本松は、奥の松酒造や大七酒造など、世界的に有名な日本酒の産地です。明治初期に建てられた智恵子の生家には、造り酒屋として新酒の醸成を伝える杉玉が今も下がっています。高村光太郎の『智恵子抄』に詠われているように、智恵子が愛してやまなかった「ほんとの空」。そのふるさとの自然、安達太良山と阿武隈川が見られる地です。

「黒塚」は、安達ヶ原に棲み、人を喰らっていたという鬼婆を葬った塚(墓)に由来します。みちのく安達ケ原の鬼婆伝説は、謡曲「黒塚」として広く知られており、能の「黒塚」、長唄・歌舞伎舞踊の「安達ヶ原」、歌舞伎・浄瑠璃の「奥州安達原」もこの伝説に基づいています。能の「黒塚」は、糸車に示されるように、時間をテーマとし、決して引き返すことの出来ない血筋を断ち切った「悲しみ」を含み持ちます。また、京の都から東北へ公家の娘の病を治すために赤子の生き肝を取りに来た乳母が鬼婆と化す「黒塚」の伝説・伝承は、東北の精神性・風土を探究するものとも捉えられます。福島の原子力発電所から東京に送電してきた歴史は、京から訪れた鬼婆が、地方で赤子の生き肝を奪う構造とも重なり、そこには、地方と大都市圏の供給、消費の関係、中央から東北への眼差しをも暗示させます。

展示会場MAP