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Project Life Hands


「 Veronica2005 ~Life Hands~ 」
インタビュー
http://www.kgs-tokyo.jp/interview/2005/050927a/050927.htm

企画する活動の概要 ~今日的な意義について~


「手仕事は心の仕事。手のかたちは心のかたち」という言葉がある。「手が言葉の器官に次いで、人間が自己を顕現し、自己を現実化するに至る最良の手段である」ヘーゲルもまた語っている。

1990年頃から渡辺晃一は、「手」を主題にし、これまで国際的に活躍している舞踊家や美術家、音楽家、思想家、科学者、スポーツ選手等、特定の職業に従事し、魅力ある活動を行っている人々を型取り、その身体的価値を継承することを目的に制作してきた。本企画の「Veronica」という名称は、キリストの聖顔布を制作した女性の名前である。そこには、見る者と見られる者、自己と他者との間にある接触、関係を、「身体」を通じて獲得する意図がある。(「Veronica」の語源は、別紙参照)

従来の美術では、理想化された「Nude」(西洋の肉体)を基準として描かれることが多かったが、日本人の等身大の「からだ」を、肯定的に捉える観点もまた必要であろう。制作者側が誰をモデルにしたのか、どの様な意図で作られたのか等、制作者とモデルとの関わりもまた重要な意味を含んでいる。

「手」は個人の物語、メッセージを伝える対象となっている。「手」の魅力は、仕草や表情だけではなく、指紋や掌紋、指や手掌の姿など、身体的に様々な魅力もある。マスメディアから伝達される「身体」は、等身大の大きさ、触覚的な「厚み」、皮膚に刻まれた個人の情報などは抜け落ちている。テレビの画面越しに見る身体は、視覚、聴覚的な情報を通じて、遠距離から一方通行に伝えられる。一方、「型取り」を行うためには、モデルは一定時間、静止して素材と触れ合う必要がある。そのため必ずモデルとの間には同意によって、一つの関係が成立しなければならない。それは写真を見て絵を描く行為とは異なっている。モデル、制作者と鑑賞者が同時代に「生きていること」が、本企画の重要な位置を占めている。

制作された「手」を展示することによって、等身大の「身体」と接触する機会が得られることで、自身の「身体」にたいする意識を深め、他者との新たな「関係性」を生み出すことにもなる。芸術作品は本来、作品を創作する過程や展示する行程、モデルの存在とも密接に関わっていた。本プロジェクトは、「生きた身体」を通じて、渡辺は芸術表現のもつ根源的な意味を問い直そうとしている。

制作の具体的な内容


  • 身体の部分(利き手)を中心に「型取り」「版」から作品を制作する。所要時間:約30分
  • 制作された作品はその後、一同を介して展示をおこなう。展示会場:ギャラリー、現代美術館など(長期にわたって展示できる場所)

対象者


  • 様々な領域で国際的に活躍されている文化人
  • 日本の伝統文化の発信に貢献した者
  • 渡辺晃一が尊敬し、興味を抱く表現者

これまでに制作させていただいた主な人物(順不同、敬称略)


靉嘔(美術家)、秋山佑徳太子(パフォーマンスアーティスト)、阿部一佳(体育学者)、アラン・シールズ(版画家)、アントニー・ゴームリー(彫刻家)、植木昭吉(農芸家)、宇野亜喜良(イラストレータ)、大野一雄(舞踏家)、大野慶人(舞踏家)、小田恵蔵(陶芸家)、折元立身(パフォーマンスアーティスト)、唐十郎(劇作家、俳優)、栗原小巻(女優)、三枝成彰(作曲家)、酒井はな(バレリーナ)、佐藤忠良(彫刻家)、佐藤時啓(写真家)、多賀新(版画家)、建畠覚造(彫刻家)、田中英道(美術史)、種村季弘(独文学者)、田村勝美(歯科技工士)、デビッド・ナッシュ(彫刻家)、中垣内祐一(バレーボール)、仲代達矢(俳優)、中林忠良(版画家)、西村陽平(美術家)、萩原美樹子(バスケット)、日野皓正(トランペット奏者)、平山素子(コンテンポラリーダンサー)、橋本章(画家)、服部克久(ピアニスト)、羽田健太郎(音楽家)、布施英利(美術解剖学者)、ブレント・ウィルソン(芸術教育学者)、細江英公(写真家)、松永里絵子(新体操)、松本千代栄(舞踊学)、宮脇理(芸術教育学)、宗像利浩(陶芸家)、元藤曄子(舞踏家)、山折哲雄(宗教学者)、山口昌男(文化人類学)、山下洋輔(ピアニスト)、湯浅譲二(作曲家)、養老孟司(解剖学者)、吉増剛造(詩人)、四谷シモン(人形作家)

これまでの「Life Hands」の紹介


展覧会
1995年  川口現代美術館、茨城県つくば美術館
2000年  Tepco銀座館、北海道立帯広美術館
2005年  スパンアートギャラリー(銀座)
2006年  福島県立博物館

主な紹介記事
1995年  日本経済新聞(文化欄特集)、雑誌「太陽」
2000年  NHK衛星放送(真夜中の王国)
2006年 NHK東北放送(特集)他